会社役員の社会保険加入条件について
本記事では、会社役員の社会保険への加入義務や条件について解説します。
役員の社会保険の加入義務
法人の役員は、労務の対象として報酬が支払われている場合、原則、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入することになります。
加入義務が発生しない場合としては、報酬が「0円」の場合であり、1円でも報酬があれば、社会保険の加入義務が発生することとなります。
非常勤役員の社会保険適用について
社会保険の資格取得については、「法人から、労働の対象として報酬を受けている者は、法人に使用されるものとして被保険者の資格を取得」するものとされており、非常勤役員の社会保険適用については、法人との使用関係の実態によることとなります。
非常勤役員の社会保険適用について、使用関係の有無に関する具体的な判断材料として以下があり、総合的に判断されます。
・ 自社の事業所に定期的に出勤しているか
・ 自社の職の他に多くの職を兼ねていないか
・ 役員会等に出席をしているか
・ 役員への連絡調整、または職員に対する指揮監督に従事しているか
・ 自社において求められて意見を述べる立場にとどまっていないか
・ 自社からの報酬が、仕事の内容に見合った、仕事に必要な費用相当額になっていないか
総合的に判断されるため、一概にこの場合であれば社会保険に加入する必要はないとは言えませんが、報酬が0円の場合は加入する必要はないものとなります。
二か所以上の事業所から給与を受け取っている役員について
複数の勤務先で働いている場合の社会保険の加入義務の判断は事業所ごとに行います。
一か所で社会保険の加入手続きを終えていても、二か所目以降の事業所で新たに加入義務が生ずることもあります。
社会保険への加入義務は、1円でも報酬があれば生じるので、新たに勤務することになった二か所目の事業所から給与を受け取るのであれば、社会保険の加入手続きが必要です。
加入手続き自体は通常の社会保険の加入手続きとほぼ同じですが、複数の事業所で勤務する場合、被保険者本人から「二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
なお、社会保険料の計算については、二か所以上の事業所から受け取っている給与額を全て合算した額を基準に算出し、その上で各事業所から支払われている報酬に応じて按分して事業所ごとの保険料納付額を計算します。
二以上事業所勤務届は選択する年金事務所に提出します。
事業所整理番号や事業所の名称・住所・報酬額など選択事業所・非選択事業所両方の事業所に関する情報の記入が必要です。
記入に必要な事項について、各会社に早めに確認しておきましょう。
提出期限は複数の事業所に勤務するようになってから10日以内であり、健康保険の被保険者証を添付して期限内に提出する必要があります。
役員に就任する顧問や親族が70歳以上の場合
70歳以上になると厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、被保険者でなくなります。
健康保険については、75歳以上になると資格喪失し、その後は後期高齢者医療制度に加入することになります。
役員等が70歳になった場合の手続きとしては、これまでは「70歳以上被用者該当届」の提出が必要でしたが、2019年4月より、70歳到達日前後で、標準報酬月額が同一である場合は届出が省略できるようになりました。
また、新たに70歳以上の方を雇用する場合は、「70歳以上被用者該当届」を提出します。
また、70歳到達時に老齢年金の受給権がない場合(国民年金の保険料納付済み期間と保険料免除期間を合算した期間が10年に満たない場合等)には、高齢任意加入被保険者となることができます。その場合は「厚生年金保険高齢任意加入被保険者資格取得申出申請書」を提出します。
役員と雇用保険の関係
雇用保険に関しては、取締役などの役員は労働者ではないため、労働保険(労災保険と雇用保険)対象にはならず、原則加入はできません。
しかし、一般の従業員としての肩書を持つ兼務役員や個人事業所における他の労働者と同様の就業実態の親族であれば労働保険の対象となり、雇用保険への加入も可能です。
兼務役員が雇用保険に加入する場合、「兼務役員雇用実態証明書」を添付書類と共に管轄のハローワークへ提出します。
また、雇用保険に加入している兼務役員の「雇用保険の徴収時の賃金額」、「労働保険の申告時の賃金額」、「退職時の離職票に記載する賃金額」については役員報酬を除いた額であることに注意が必要です。
まとめ
今回は、役員の社会保険への加入条件について解説しました。
会社役員の場合以外にも、パートや日雇い労働者など、社会保険の加入条件は様々で少し複雑なため、注意して給与計算を行いましょう。
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