退職金に対する課税の計算方法と注意すべきこと
退職所得とは
退職金は税法上「退職所得」と呼ばれます。
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。
また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。
在職中に受け取る賃金や賞与等は「給与所得」になりますが、定年退職後引き続き同じ企業で再雇用される場合や役員に就任した場合に受け取る退職金は「退職所得」となります。
退職金の所得税の計算には独自の計算式を用いるため、退職所得なのか給与所得なのかをはっきりさせる必要があります。
退職所得の計算方法
退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
確定給付企業年金規約に基づいて支給される退職一時金などで、従業員自身が負担した保険料または掛金がある場合には、その支給額から従業員が負担した保険料または掛金の金額を差し引いた残額を退職所得の収入金額とします。
なお、退職手当等が特定役員退職手当等(役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもの)に該当する場合については、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になります(上記計算式の2分の1計算の適用はありません。)。
「役員等勤続年数」とは、退職金等に係る勤続期間のうち、役員等として勤務した期間の年数(1年未満の端数がある場合はその端数を1年に切り上げたもの)をいいます。
退職手当等が短期退職手当等(短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの)に該当する場合ついては、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については、上記計算式の2分の1計算の適用はありません。
「短期勤続年数」とは、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、この勤続年数については役員等として勤務した期間がある場合、その期間を含めて計算します。
退職所得控除額の計算方法
退職所得控除額は、次のように計算します。
退職所得控除額の計算の表 |
|
勤続年数(=A) |
退職所得控除額 |
20年以下 |
40万円 × A |
20年超 |
800万円 + 70万円 × (A – 20年) |
退職所得控除額の計算には例外が2つあります。
1つ目の例外として、障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額に、100万円を加えた金額となります。
2つ目の例外として、前年以前に退職金を受け取ったことがあるときまたは同一年中に2か所以上から退職金を受け取るときなどは、控除額の計算が異なることがあるので、注意しましょう。
税額の計算
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
「退職所得の受給に関する申告書」はどんな手続きか
「退職所得の受給に関する申告書」の項目を記載し、企業など退職金の支払者に提出するだけの手続きです。
この書類は退職金の支払者が保管することになっており、税務署長から特に提出を求められない限り、税務署に提出する必要はありません。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人
退職金等の支払者が所得税額および復興特別所得税額を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。
ただし、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人
退職金等の支払金額の20.42%の所得税額および復興特別所得税額が源泉徴収されますが、受給者本人が確定申告を行うことにより所得税額および復興特別所得税額の精算をします。
平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に支払を受ける退職手当等については、所得税とともに復興特別所得税が課されます。
退職金を受け取る際には申告書の提出を忘れずに
何が退職金で何が退職金でないかの分類をきっちりするとともに、「退職所得の受給に関する申告書」を忘れずに勤務先に提出しましょう。
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