初めて人を雇ったら・・・給与計算5つのポイント
従業員を初めて雇い入れるときは、どの経営者にとっても特別な瞬間です。責任の重さや誇らしさと同時に、何をどうすればいいのかという漠然とした不安を感じられる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は初めて従業員を雇い入れる際の注意点を、給与計算実務の観点から見ていきたいと思います。自社での給与計算、または給与計算のアウトソーシングを検討されている方の参考になれば幸いです。
その1
まずはその従業員が、給与支払の対象者となるかどうかを確認します。
会社(または個人事業主)と「雇用契約を結んだ人」(法人の場合は役員も含む)が、給与計算の対象者となります。仕事をしてもらって、その対価を支払ったとしても、たとえば委託契約や請負契約であれば支払った報酬は給与所得になりませんので、給与計算の対象にはなりません。
その2
以前ブログでも紹介したように、給与計算には、守るべき5つの原則があります。以下の原則を守った上で締め日、支給日など各種ルールを会社ごとに設定します。
- (1)通貨で支払う
現物や手形、ポイント付与などでの支払いは認められません。また、口座振り込みも本来は同意が必要となります。※2023年4月からはデジタル通貨での支払いが可能になります
- (2)直接本人に支払う
友人や知人のみならず、親に支払うことも原則禁じられています。
- (3)全額本人に支払う
所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料以外、本人の同意なしに給与から天引きすることは原則禁じられています。たとえば会社が本人に貸しているお金であっても、勝手に給与から天引きしたりする行為は禁じられています。
- (4)毎月1回以上支給日を設ける
たとえば年俸制の支払を、年6回(偶数月)に分割して支給する行為は禁じられています。極端にいうと、毎月一回以上支払っていれば、年俸制の金額をどの月にいくら割り振るかは契約書等で自由に決められます。
- (5)一定期日に支払う
たとえば「当月末日締め翌20日から25日の間に支給」というルールは原則禁じられています。支給日が休日にあたる場合に前倒しするなどの例外は認められています。
その3
次に、雇った従業員にとって、この会社がメインの勤務先であるかどうかを確認します。メインの勤務先である場合は入社時に扶養控除等申告書を提出してもらい、毎月の給与から引く源泉所得税は「源泉徴収税額表」の甲欄で所得税額を確認し、控除します。逆に、メインの勤務先が他にある場合は、税額表の乙欄の税額を控除することになります。
この確認を省略して給与計算を行うことも可能ですが、あらかじめ確認しておくことが望ましいです。
従業員の給与から控除した源泉所得税は、会社で納付書を作成のうえ、翌月の10日までに(納期の特例をのぞく)支払う必要があります。
税務署に届出を出すと、納付書が事業所所在地に定期的に届くようになります。ちなみに、規模の小さい会社で源泉所得税の納期の特例の承認を受けると半年に1回の納付で済みます。なお納付を怠ってしまうと会社にペナルティが課される場合があるので注意が必要です。
その4
当該従業員の働き方(雇用契約上の契約期間及び所定労働日数や所定労働時間など)によっては、社会保険(健康保険、厚生年金保険)や雇用保険に新規加入をする必要があります。また、役員以外は原則労災保険の加入が必須となりますので、所轄の年金事務所、労働基準監督署、ハローワークへの手続が必要となります。手続の代行についてや、そもそも所定労働日数、社会保険とはなんぞや?という疑問については社会保険労務士へのご相談をおすすめします。
その5
最後に、従業員の給与額を決めなくてはいけません。従業員の給与額は任意に設定可能ですが、最低賃金は上回る必要があります。最低賃金は以前ブログでも紹介したように、時給で公表されており、日給制や月給制の場合は時間単価に換算して比較確認することになります。最低賃金は毎年10月ごろに改定されますので、定期的な確認を行いましょう。
最後に、その他の注意事項をあげてみましょう。
〇支給日が土日祝日と重なる場合は、できるだけ前営業日に支給する
〇給与を振込する際は、支給日の午前10時までに払い出しできるようにする
〇基本給一本ではなく、交通費やその他の手当に分けて支給する
〇残業させる可能性があれば、「固定残業手当」の導入を検討する
いかがでしたでしょうか。たった一人の給与計算であっても、相応の手間がかかり、多岐にわたる知識や付随する手続が必要なことがお分かりいただけたかと思います。
給与計算は従業員にとって最も重要な事項を決定し、生活を左右するものです。従業員との信頼関係の構築のためには、正しい給与計算事務を行うことが大切です。
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