在宅勤務時に通勤手当は支給すべきか?
本記事では、在宅勤務時に通勤手当は支給すべきかどうかについて、判断するためのポイントを解説します。
そもそも通勤手当に法律上の規定はない
通勤手当は、労働基準法などにおける法律上の規定は無く、従業員に対して雇用者が必ず負担するものではありません。
しかし、実際には通勤手当の規定を定めているケースが多く、支給するのが一般的な認識になっています。
また労働基準法では、通勤手当は労働の対価とみなされており、賃金の一部という扱いです。
ただし一定額以下であれば非課税対象という例外的な一面もあります。
例えば、公共交通機関だけを利用して通勤する場合、1ヶ月15万円を上限額として、運賃額が非課税となり、新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合には非課税の通勤手当に含まれます。
なお、グリーン車を利用した場合のグリーン料金については、最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは原則認められないため、注意が必要です。
また、マイカー・自転車などを使用して通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離に応じて定められています(参考:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」)
ただし、業務に関連する交通費については、例えば出張費や旅費の実費精算は会社としての経費であり、通勤手当とは異なり、賃金には該当しないものとなるため、注意が必要です。
在宅勤務時の通勤手当の支給については就業規則等の定めによる
労働基準法上、使用者は、通勤に関する費用の支払いを義務付けられていませんが、この通勤手当についてどのように支払うかは労使の合意によります。
例えば、通勤手当を交通費の実費として支給する旨の規定がある場合、在宅勤務時の通勤手当の支払いは不要になります。
基本的には就業規則や賃金規程に通勤手当の支給ルールが規定されているため、その内容を確認する必要があります。
通勤手当について実費の趣旨が明確な場合
通勤手当は、従業員からの利用する公共交通機関の種類、経路の申告に基づき、会社が最も経済的かつ合理的な経路を認定し、その経路に相当する額を支給するのが一般的です。
このように通勤手当が、通勤費の実費の趣旨であることが明確な場合には、1か月の在宅勤務により実費が一切発生していないため、通勤手当の支給は不要なものとなります。
例えば、「通勤手当は、通勤に公共交通機関を利用する社員に対し、通勤に係る実費として、運賃、時間および距離等の事情に照らし、会社が認めた最も合理的かつ経済的な経路および方法で算出した運賃相当額とする。」のように規定している場合がこれに該当します。
なお、定期代の6か月相当額をあらかじめ支給しているケースでは、定期の払い戻しが必要になるため注意が必要です。
支給方法が具体的に特定されている場合
支給方法が、「1か月定期代」など具体的に特定されている場合においても、通勤手当が通勤費の実費の趣旨である以上、在宅勤務により実費が一切発生していない場合は通勤手当を支給する必要はないと考えられます。
しかし、週1~2回は出勤日があるなど、実費が多少でも発生する場合については、通勤手当をどのように支払うかは就業規則等の定めに基づくため、会社が、実費の支払い方法として、1か月定期代を支給すると特定している以上、この規定に基づき1か月定期代を支給する必要があると考えられます。
在宅勤務を想定して規定するのであれば、「在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が週に〇〇日以上の場合の通勤手当については、毎月定額の通勤手当は支給せず、実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給する」のような規定を定めた方がよいものとなります。
通勤手当を一律で支給している場合
従業員の通勤経路や費用に関係なく、一律で通勤手当を支給している場合には、そもそも通勤手当が交通費の実費の趣旨として支払っているものではないことから、仮に在宅勤務で全く出社していない場合でも支給をしなければならないものとなります。
ルールを規定していない場合
就業規則や賃金規定、雇用契約書等でルールを規定していない場合については、これまでの会社における慣習的な取り扱いや事業主と従業員の認識などから、上記のどれに該当するかを判断することになります。
まとめ
今回は、在宅勤務時に通勤手当は支給すべきかどうかについて、判断するためのポイントを解説しました。
在宅勤務を導入する場合は、正しく給与計算できるように、基本的な事項は抑えておきましょう。
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