「賃金台帳ってなんですか?」
給与計算のアウトソーシング業務を行う中で、お客様から「賃金台帳が必要になったのですが、どういうものでしょうか」と問合せを受けることがよくあります。
給与計算実務担当者でも、なんだかよくわからないけれどとりあえず保存している…という方も多いかもしれません。
実は賃金台帳は、給与計算を行う上で大事な帳票の一つです。いわゆる法定三帳簿のひとつであり、法定三帳簿とは、労働基準法もしくは労働基準法施行規則で保管が定められているものを指し、賃金台帳以外にも「労働者名簿」「出勤簿」の2つの帳簿作成が義務づけられていることはご存じの方も多いでしょう。この3つの帳簿をまとめて「法定三帳簿」といいます。
今回は、法定三帳簿の中でも特に給与計算にかかわりの深い賃金台帳について説明していきたいと思います。
そもそも、賃金台帳は何のために存在するのでしょうか。
賃金台帳とは、労働基準法の第108条で作成が義務づけられた書類です。従業員への給料の支払情報を記載するもので、同じ会社でも部門や事業内容が異なる場合、事業所ごとに作成して保存する必要があります。会社の労務管理には欠かせない、非常に重要な書類です。
なお、台帳を作成する対象となるのは、事業所で労働するすべての従業員です。正社員や管理監督者はもちろんのこと、パートタイマーやアルバイト、日雇い労働者も対象となります。個人事業主の場合でも、従業員が1人でもいる場合は賃金台帳の作成が必要になります。
さらに賃金台帳に記載する事項と保存期間は、以下のように定められています。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外・休日・深夜労働時間数
- 基本給や手当の種類およびその額
- 控除内容とその額
労働基準法では、使用者は上記の内容を明記し、最後に書き入れた日から起算して5年間(当分の間は3年)保存しておくことが義務づけられています。使用者は正しく台帳を作成して保存しないと労働基準法違反となり、同法120条に記載の通り30万円以下の罰金に処されるおそれがあります。
賃金台帳の記載事項を見ると、以前ブログでも取り上げた給与明細と内容が重複していることがわかります。どちらも従業員に支払った給与について記載した書類ですが、給与明細を賃金台帳として代用することはできないので注意しましょう。なぜなら、給与明細には賃金台帳の要件である法定項目が記載されていないためです。
次に、賃金台帳の基本的な作成方法をご説明します。
まず、作成する書式についてですが、賃金台帳には記載すべき項目が定められていますが、書式についてはとくに定められていません。そのため法定項目さえ満たしていれば、どのような書式でも正式な賃金台帳として認められるのです。
一般的な作成方法としては、以下のようなものが挙げられます。
・Excelで作成する
・ソフトを使う
賃金台帳は、上記の方法で企業が自ら作成することも可能ですしアウトソーシングも可能です。我々Aimペイロールエージェンシーでももちろん作成可能です。
作成方法が決まったら、あとは法定項目を踏まえて記載していくのみです。それぞれの項目のポイントをまとめたので、作成時はしっかりと押さえておきましょう。
・氏名・性別
従業員が特定できるよう、氏名だけではなく性別も記載しておきます。氏名の隣など、わかりやすい場所に性別を記載する欄を作成しておきましょう。
・賃金計算期間
給与が正確に計算されているかどうかを判断するために、給与の計算期間は必ず記載しておきます。たとえば、「2022年1月1日~2022年1月31日」などと書いておくことで、支払ったのがいつの給与かを確認できるようにしておきます。
この項目は正社員でもアルバイトでも記載する必要がありますが、例外として1か月未満の日雇い労働者の場合は記載が不要です。
・労働日数および労働時間数
その期間中に労働した日数と時間数についても記載しておきます。タイムカードを見ながら記載すると、ミスが防げます。
・時間外、休日、深夜労働時間数
時間外労働や休日労働、深夜労働時間数は、残業代や休日手当、深夜労働手当などを計算するときに必要な情報です。それぞれで割増率が異なるため、個別に時間を計算して記載に残しておかなければいけません。
管理監督者にあたる方は、時間外手当や休日手当に関しては支払いが不要であるため、記載が不要です。ただし、深夜労働手当は支払いが必要なので、記載しておきましょう。
・基本給や手当の種類およびその額
基本給だけではなく、通勤手当や扶養手当などの手当をすべて項目別に金額を記載します。通貨以外で支払われる給与がある場合は、その部分についても記載する必要があります。
・控除内容とその額
給与から差し引く健康保険や雇用保険などについて、その内容と金額を残しておきます。会社が独自で控除している旅行積立金や社宅費、財形貯蓄などについても記載する義務があります。
このように、賃金台帳は重要な帳簿であることと同時に、作成にはなかなか骨が折れることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
賃金台帳についてもっと知りたい、作成を依頼したい、給与計算について不安がある、企業の給与計算代行、WEB明細化、勤怠集計効率化、給与制度設計、人事評価制度の構築、人事労務管理のDX化及び年末調整補助サービス等の専門業務のアウトソーシングサービス・コンサルティング業務を行うAimペイロールエージェンシーにご連絡ください。親身になってご相談に乗らせて頂きます!
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