歩合制を導入するメリット・デメリットおよび注意点を解説
本記事では、歩合制を導入するメリット・デメリットおよび注意点を紹介します。
歩合制とは
歩合制とは、労働者の売上などの成果に応じて支給額が変動する成果報酬型の給与形態です。
例えば、売上額の10%分、あるいは契約1件につき10,000円といった契約は歩合制になります。
歩合制は労働者の能力や実績が給与に直結するため、労働者の努力次第で収入が上げられる制度といえます。
出来高払制やインセンティブ制などは歩合制にあたります。
固定給と歩合給
固定給は従業員が一定の時間働いた対価として、一定の決められた報酬が支給される給与形態であり、労働者の仕事の成果に関わらず必ず給与を支給するため、一定の収入が保証されます。
歩合給と固定給の違いは、歩合給が労働者の成果によって変動するのに対して、固定給はほとんど変動しないという点です。
歩合給と固定給を組合せて用いられることもあります。
歩合制を導入するメリット・デメリット
歩合制のメリットとデメリットについて、以下で解説します。
歩合制を導入する場合の会社のメリット
歩合給制では、成果を上げて会社に貢献している従業員にしっかりインセンティブをつけられるため、優秀な従業員のモチベーションを向上させる効果が期待できます。
従業員は短時間で成果を出すほど効率的に収入を上げられるため、会社全体として生産性が上がる可能性があります。
また、歩合給は残業代の計算時に会社側のメリットがあります。
歩合給部分の残業代は、次の計算式により算出します。
歩合給の残業代=歩合給の基礎時給×時間外労働の時間数×0.25以上
※休日労働の場合は0.35以上
歩合給の基礎時給は、歩合給をその月の「総労働時間数」で割ったものです。
歩合給部分の場合は割増率が1.25以上ではなく、0.25以上となり、これは、歩合給の基礎時給の1.0に該当する部分はすでに歩合給の中に含まれていると考えられているからです。
よって、歩合給は固定給に比べて、残業代の支給額を抑制できるメリットがあります。
歩合制を導入する場合の従業員のメリット
従業員のメリットとしては、勤務した時間や年齢に関係なく収入を増やすことができる点があります。
従業員の頑張り次第で、短期間で収入を上げることもできます。
頑張りが成果に反映されるため、固定給に比べて仕事に対するモチベーションのアップも期待できます。
歩合制を導入する場合の会社のデメリット
会社のデメリットとして、労働者の理解をきちんと得られないまま歩合給制を導入した場合、収入が安定しないために、離職者が出てしまうおそれがあります。
また、チームで働く業種の場合、個人の成績を優先するあまり、職場内でチームワークが円滑に行われなくなる可能性もあります。
成果を上げられない労働者は、長時間労働によって成績を上げようとする傾向があるため、長時間労働に伴うトラブルに関して、会社としては労務管理に注意する必要があります。
歩合制を導入する場合の従業員のデメリット
従業員としては、収入が不安定であることがデメリットになります。
特に、成果が出せない場合は収入が下がってしまうため、将来の収入に対する精神的な不安感がストレスになる場合もあります。
よって、固定給に比べれば、精神的な負担が大きいといえます。
歩合制を導入する際の注意点
歩合制を導入する際に、あらかじめ知っておくべき注意点もあるので紹介します。
1 完全歩合制を導入する際の注意点
完全歩合制は固定の給料がないため、仕事で成果が出なければ収入がゼロになるリスクがあります。
注意点として、雇用している労働者に完全歩合制を適用することは、労働基準法27条における「出来高払制の保障給」が支払われないため違法となります。
労働基準法27条 出来高払い制の保障給:
出来高払い制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ、一定額の賃金の保障をしなければならない。
したがって、正社員やパートなど、雇用契約を結ぶ場合には完全歩合制を採用することはできません。
労働基準法が適用されない個人事業主(フリーランス)との業務委託契約であれば完全歩合制を適用することが可能です。
なお、業務委託契約では完全歩合制を採用できるというだけで、全ての業務委託契約が完全歩合制というわけではありません。
2 固定給+歩合給について
固定給+歩合給は、一定の給料が支払われた上で、個人の成果に対して歩合給としてもらえる仕組みのため、固定給と歩合給の良いとこ取りの仕組みといえます。
注意点として、固定給については都道府県が定めた最低賃金以上の額を定める必要があります。
3 従業員の労働時間の管理
歩合制の場合でも、従業員の労働時間の管理が求められるため、タイムカードなどを用いて適切に勤怠管理を行う必要があります。
4 歩合制における賃金保障
労働基準法27条では、上記記載の条文の通り、給与の一定額の最低保障額が定められています。
これは仕事の成果が無い場合についても、一定の給料を保障しなければならないことを定めたものであり、歩合制の場合も適用されます。
保障給の金額は、会社内で通常の労働者が受け取っている平均賃金の60%以上が望ましいと考えられており、保障給を支払わなければ30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。
※参考通達:昭和23年9月13日発基17号
同時に、「最低賃金法」によって都道府県ごとに定められている最低賃金ラインを上回ることも必要です。
このような注意点があることは、事前把握しておく必要があります。
まとめ
今回は、歩合制を導入する場合のメリット・デメリットおよび注意点について解説しました。
メリットも多い歩合制ですが、注意点についてもしっかり抑えた上で、導入・運用する必要があります。
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