「所定」と「法定」の違いを理解しましょう
2022/09/26
給与計算をする上で、時間外労働や休日労働の計算がでてきますが、これらについて法律上の規定を正しく理解していることが必要です。
◇時間外労働
時間外労働については、一般的に考えられている「残業」と法律上の「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。
いわゆる「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超える時間のことを指すと考える方が多いのではないでしょうか。
一方、法律上の「時間外労働」とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」を超える時間のことをいいます。
労働基準法32条では、以下のことが定められています。
・1週間で40時間を超える労働をさせてはならない
・1日8時間を超える労働をさせてはならない
この通り、1週間で40時間、1日8時間の労働が法律上の上限とされており、これを「法定労働時間」といいます。
例えば、始業時刻が9:00、休憩時間が12:00~13:00、終業時刻が17:30の会社であれば、所定労働時間は 7:30となります。
この場合に、9:00に始業し18:00に終業した労働者については、いわゆる「残業」は30分になりますが、 法律上の「時間外労働」は無しとなります。ただし、残業手当の算定基準を、「所定労働時間」を超える時間とするか、「法定労働時間」を超える時間とするかは、労使の定めによって決まります。
「法定労働時間」を超える時間と定めている場合、17:30~18:00までの30分は「法定内残業時間」となり、通常の賃金と同額の残業手当を支給することになります。
では、上記の労働時間で18:30まで労働し1時間の「残業」が発生した場合はどうでしょうか。1日の労働時間は8時間30分となり「法定労働時間」を超えています。
この場合は、18:00~18:30までの30分は125%の割増賃金を支払う必要があります。
◇休日労働
休日労働についても同様に注意が必要です。
いわゆる休日労働というと、会社で定める「所定」休日に労働した時間と考える方が多いのではないでしょうか。一方、法律上の休日労働とは、労働基準法で定められた「法定」休日に労働した時間のことをいいます。 労働基準法では原則として、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回休日を与えなければならないとされています。このため、「法定」休日とは、1週間につき1日の休日のことをいいます。
例えば、毎週土曜・日曜を所定休日、そのうち日曜を法定休日と定めている事業場であれば、土曜日に労働した時間は「法定」休日労働には該当せず、日曜日に労働した時間が「法定」休日労働となります。 月曜~土曜までに労働した時間が40時間を超えていた場合には、超えた時間は「時間外労働」にカウントされるので、注意が必要です。
月曜日から金曜日まで1日8時間労働をし、土曜日5時間、日曜日3時間労働した場合、
土曜日の5時間は週40時間を超えているため125%の割増賃金、日曜日は法定休日に労働したため135%の割増賃金の支給が必要となります。
※週の起算日は月曜日
これらの法定時間外労働や休日労働をさせるためには、36協定の締結が必要です。労働時間は労働基準法によって上限が定められており、労使の合意に基づく所定の手続きをとらなければこれを延長することはできません。
2019年4月(中小企業への適用は2020年4月)に施工された、時間外労働の上限規制は働き方改革の一環として規定されました。
長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。
長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつきます。
使用者は労働時間を適正に把握をするなど、労働時間を適切に管理する責務があります。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成 29年)では、使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにしています。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 ☞ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
このガイドラインでは、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者は対象外となっていますが、今回の法改正においては、長時間労働者に対する医師による面接指導の履行確保を図るため、労働安全衛生法を改正し、これらの方の労働時間の状況(※)についても、労働安全衛生規則に規定する方法で把握しなければならないこととなりました。
※労働時間の状況・・・いかなる時間帯にどのくらいの時間、労務を提供しうる状態にあったかという概念。
労働時間の状況の把握は、タイムカードによる記録、PC等の使用時間の記録等の客観的な方法や使用者による現認が原則となります。これらの方法をとることができず、やむを得ない場合には、適正な申告を阻害しない等の適切な措置を講じた上で自己申告によることができます。事業者は、労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存する必要があります。
時間外労働や休日労働が多い事業所は、従業員の健康や生活を守るためにも、労働時間の見直しが必要です。また、時間外労働や休日労働が増えてくると、お給与計算も複雑になりミスにつながりやくなってきます。
少しでもご不安な点等がございましたら、労務、給与ともにアウトソーシングがおすすめです。
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