最低賃金改定! 最低賃金制度について確認しよう
2022/09/14
先日厚生労働省より、地域別最低賃金額が改定されることが発表されました。
北海道は10月2日から最低賃金額920円に改定となります。この日から賃金改定をした場合、給与を月末締め・翌月払いにしている会社は11月支給分から改定後の賃金で計算をする必要があります。
11月と聞くとまだ先の話かと思いますが、使用者側では今の時期から従業員の給与が最低賃金を下回っていないか確認しておく必要があります。
時給者、日給者、月給者含め全ての労働者において適用となりますが、最低賃金額以上の賃金が支払いされているかどうか正しく確認できていますでしょうか?
今回は、その計算方法についておさらいをしていきたいと思います。
※ここでは北海道の最低賃金額920円を例にして計算をしていきます。
- ①時間給制
時間給≧最低賃金額(時間額)
- ②日給制
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
日給:9000円
1日の所定労働時間:8時間
(計算方法)9000÷8時間=1125円>920円 ⇒OK
- ③月給制
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
月給:165000円
1ヶ月の平均所定労働時間:173.8時間(1日8時間、週40時間の場合)
(計算方法)165000円÷173.8=949円(四捨五入)⇒OK
- ④上記①~③の組み合わせの場合
例えば基本給が日給制で各手当が月給制の場合は、それぞれ②、③の式により時間額を計算し、それらを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。
日給7200円×20日勤務
職務手当20000円
通勤手当3000円
総支給額 167000円
(計算方法)
1.(手当)23000円-3000円=20000円
2.日給7200円÷8時間=900円/時間
手当20000÷173.8=115円
3.900円+115円=1015円≧920 ⇒OK
ここまで、一般的に多いと思われる4つのパターンの給与形態の計算方法をおさらいしましたが、④の計算方法の際、なぜ通勤手当を含めていないのか。
それには理由があります。
最低賃金を計算する際、最低賃金の計算から除外する賃金というものが決められているからです。
◇最低賃金の計算に含めないもの◇
1,臨時に支払われる賃金(結婚手当。大入り手当など)
2.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
3.所定労働時間を超える時間に対して支払われる賃金(残業手当、固定残業手当など)
4.所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
5.午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
6.精皆勤手当
7.通勤手当
8.家族手当
これらの賃金は最低賃金を計算する際に、含めてはいけない賃金となっているため注意が必要です。
単純に総支給額を総労働時間で割って出した金額が最低賃金を上回っているから大丈夫と思いがちですが、しっかりとした計算ルールがあります。
また、最低賃金という言葉はよく耳にしますがこれは最低賃金法で最低賃金制度として定められている法律ですので、違反をしたときには罰則があります。
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に最低賃金額より低い賃金を労働者と使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされてしまい、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。
また、ここで説明をした地域別最低賃金額については最低賃金以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に50万円以下の罰金が定められております。もうひとつの特定(産業別)最低賃金額については最低賃金以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に30万円以下の罰金が定められています。
過去10年間の最低賃金額の推移をみると、北海道ではおおよそ200円程あがっております。今回の改定額は過去最大の引上げとなっており、使用者側としては雇用者維持が難しくなることも懸念されます。
とはいえ、労働者側にとっては昨今の状況を踏まえれば最低賃金の引き上げは良い方向へ向かう第一歩なのだろうと思います。
使用者と労働者が良い関係を保つためには、毎月支払うお給与が正確に支払われているかというところも大切になってきます。
少しでもお給与計算に不安な事があれば、是非私たちへお問い合わせください。
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