随時改定
2024/06/17
随時改定とは、給与の変動を社会保険料額に適切に反映するために必要な手続きです。
提出書類の名前をとって「月額変更」「月変(げっぺん)」とも呼ばれます。
随時改定の時期や条件は個別かつ複雑である一方で、届出が遅れると従業員に影響の大きい重要な手続きです。
本記事では基礎知識や注意点について解説いたします。
定時決定と随時改定
社会保険料額は、給与に応じて区分された「標準報酬月額」の等級に基づき算出されます。
定時決定と随時改定は、この等級を決める手続きになります。
それぞれ以下の手続きになります。
【定時決定】年に1回の改定:算定基礎届
毎年7月1日時点で雇用している社員すべてが対象になり、4月・5月・6月に支払った給与が基になります。
6月中旬以降に年金事務所から送られてくる算定基礎届にて4月・5月・6月の給与額を提出し、同年9月から定時決定後の等級で社会保険料が控除されます。
【随時改定】給与に大きな変動があった時等:月額変更基礎届
随時改定は定時決定と異なり、届出時期が定まっているわけではありません。
給与に大きな昇降があったり、給与の雇用形態の変更で固定的な給与の額が著しく変動した時に行います。
随時改定の条件
社会保険の随時改定は、以下の3つの条件を全て満たすときに行います。
●昇給または降格等により固定的賃金に変動があった場合 |
●賃金変動以降3か月間の給与の平均額に基づく標準報酬月額と、変動前野標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じる場合 |
●賃金変動月から3か月間連続して、支払基礎日数が17日以上である場合 ※ただし短時間労働者の場合は11日以上である場合 |
上記3つの条件のうち1つでも当てはまらない場合は随時改定の対象外となり、現状の等級にて社会保険料が計算されます。
㌽☝固定的賃金の定義
「固定的賃金」とは、支給額や支給率が決められており、勤務時間や業績などに左右されない賃金を指します。
基本給以外にも通勤手当や家族手当など、月々の支給額が決まっているものが固定的賃金に含まれます。
また、日給や時間給に変更があったときや、割増賃金率や時間単価の変更により、時間外手当の支給割合・支給単価が変更になった際は、固定的賃金の変動とみなします。
人事考課による昇給や降格だけでなく、結婚による家族手当の支給、引っ越しでの通勤手当の変更なども対象となるため注意が必要です。
随時改定の注意点
■遡って昇給があった場合
遡って昇給があった場合は、本来の昇給月ではなく、あくまでもその差額を実際に支給された月が起算月となります。
この場合、その支払われた差額を含めてしまうと標準報酬月額が高くなってしまうため、その分は除き随時改定に該当するか確認を行います。
【例】従前の標準報酬月額:320,000円
・基本給310,000円→7月(8月支給分給与)から360,000円に昇給した
・10月支給給与に8月.9月支給分の昇給差額(100,000円)を遡って支給された
上記の場合は10月を起算月とし、以下のように計算します。
【10月:370,000円+11月:330,000円+12月:330,000円-100,000円(昇給差額)】
→随時改定後の標準報酬月額:360,000円
■月の途中で昇給があった場合
計算期間の途中での昇格の場合は、昇給した月については「含めず」その翌月を初月として3ヶ月間の平均を見ることになります。
このことについては、日本年金機構が出している「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」で以下のように記載があります。
【昇給・降給した給与が実績として1ヶ月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以後3ヶ月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う】
上記の通り「1ヶ月分確保」となっているので、昇給後にまるまる1ヶ月間昇給後の給与が支払われた月からカウントするということになります。
随時改定が漏れてしまった場合
随時改定を正しく行わずに年金事務所への届出などが漏れていると、定時決定や年金事務所調査の際に届出のやり直しや訂正を求められます。
その結果、社会保険料の不足分を遡って徴収されることもあります。
また、従業員の給料等が社会保険料に反映されず、結果として従業員が将来受け取る年金額等に影響が出てしまう可能性があります。
従業員とのトラブルに発展してしまうケースがあるため、正しい手続きが必要になります。
まとめ
社会保険料の随時改定は、タイミングを忘れずに届出を行うことが大切です。随時改定の対象と範囲を正しく理解し、漏れがないように注意しましょう。
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