管理職なら残業代は出ない?「管理監督者」の3要素と深夜手当の計算ルールを徹底解説

「課長に昇進したから残業代は支給しない」
「店長は管理職だからタイムカードは不要」

中小企業では、このような運用が慣習的に行われているケースも少なくありません。
しかしその判断が、法律上の「管理監督者」に該当しない場合、いわゆる「名ばかり管理職」として違法となります。

実際には、ある日突然「過去3年分の未払い残業代」を請求される――
そんなトラブルは決して珍しいものではありません。さらに、管理監督者であっても深夜手当の支払いは必要である点を誤解している企業も多く見られます。

本記事では、管理監督者と認められるための3つの要件や、深夜手当の正しい考え方を整理し、 企業をリスクから守るための適切な給与管理のポイントを解説します。

  • 「管理監督者」として認められるための3つの絶対条件
  • 管理職でも支払い必須!「深夜手当」の正しい計算ルール
  • 法改正で義務化された「管理職の労働時間把握」の注意点

自社の運用が適正かどうか、この記事でぜひチェックしてください。

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目次

「管理職=残業代なし」は間違い?管理監督者の定義

まず、「管理職」と「管理監督者」の違いを明確に理解する必要があります。多くの企業がこの二つを混同していますが、法律上の扱いは全く異なります。

労働基準法上の「管理監督者」とは

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

労働基準法第41条第2号では、「監督若しくは管理の地位にある者」(以下、管理監督者)について、労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないと定めています。

具体的には、管理監督者として認められた場合、以下の規制が適用除外となります。

  • 労働時間:1日8時間・週40時間の法定労働時間の枠に縛られず、時間外割増賃金(いわゆる残業代)の支払い義務がない。
  • 休憩:休憩時間を一斉に与える等の義務がない。
  • 休日:週1回または4週4休の法定休日を与える義務がなく、休日割増賃金の支払い義務がない。

しかし、この条文が適用される「管理監督者」とは、単に部長や課長といった役職名を持っている者のことではありません。

行政解釈や判例では、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と厳格に定義されており、その実態が詳しく問われます。

一般社員(管理職)との違いと残業代の扱い

社内呼称としての「管理職」であっても、法的な「管理監督者」の要素を満たさない場合は、労働基準法上の労働者として扱われます。

したがって、原則通りに残業代(時間外割増賃金、休日割増賃金)を支払わなければなりません。

項目一般社員・一般管理職法上の管理監督者
時間外割増賃金支払い義務あり(1.25倍〜)支払い義務なし
休日割増賃金支払い義務あり(1.35倍〜)支払い義務なし
深夜割増賃金支払い義務あり(0.25倍〜)支払い義務あり(0.25倍〜)
有給休暇付与義務あり付与義務あり
休憩時間付与義務あり付与義務なし

ここで特に注意すべきは、「管理監督者であっても深夜割増賃金の支払いは必須である」という点です。


【判断基準】管理監督者として認められる「3つの要素」

では、どのような条件を満たせば法的な「管理監督者」として認められるのでしょうか。

過去の判例(日本マクドナルド事件など)や厚生労働省の通達に基づき、以下の「3つの要素」を満たしている必要があります。一つでも欠ければ、管理監督者とは認められない可能性が高いです。

参考:日本マクドナルド事件

要素①:経営者と一体的な職務内容と権限

1つ目の要素は、「経営者と一体的な立場で仕事をしているか」です。

  • 経営への参画:経営方針の決定や事業計画の策定など、経営上の重要事項に関与しているか。単に上司の決めた方針を部下に伝達・実行させるだけの立場では不十分です。
  • 労務管理権限:部下の採用、解雇、人事考課、配置転換などについて、実質的な決定権限を持っているか。例えば、「アルバイトのシフト作成権限はあるが、採用決定権や時給決定権はない」という店長職の場合、この要素を満たさないと判断される可能性が高くなります。
ペイロールエージェンシー横野

『店長』や『課長』という肩書きだけで判断するのは非常に危険。実務上、稟議書を決裁する権限や部下の人事評価に対する最終決定権がない場合、裁判等では『単なる現場のリーダー』とみなされ、管理監督者性が否定されるケースが多々あります。

要素②:勤務時間についての自由裁量

2つ目の要素は、「自分の勤務時間を自分の裁量で決められるか」です。

  • 出退勤の自由:始業・終業時刻が厳格に定められておらず、遅刻や早退をしても給与カットやペナルティを受けないこと。
  • 時間管理の有無:「朝9時の朝礼には必ず参加しなければならない」「タイムカードで遅刻が管理されている」といった状況であれば、時間の裁量権がないとみなされます。
ペイロールエージェンシー横野

よくある誤りとして、『始業や就業の時刻に実質的な自由がない』ケース
があります。例えば、店舗の開店・閉店作業のために必ず所定の時間に居なければならない場合や、シフト制で勤務時間が固定されている場合は、裁量権がないと判断されやすいポイントです。

要素③:地位にふさわしい賃金待遇

3つ目の要素は、「管理監督者にふさわしい高待遇を受けているか」です。

  • 給与水準:基本給や役職手当が、一般社員に比べて十分に高いこと。
  • 逆転現象の有無:もし管理監督者にならずに残業代をもらっていた場合と比較して、給与総額が下がっていないか。あるいは、長時間残業をしている一般社員や部下の年収が、上司である管理監督者の年収を上回っていないか(逆転現象)が重要視されます。
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【最重要】管理監督者でも「深夜割増賃金」は必須

最も多い誤りが、「管理監督者には一切の割増賃金を払わなくて良い」という思い込みです。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

労働基準法第41条で除外されているのは「労働時間・休憩・休日」のみであり、「深夜業(午後10時〜翌午前5時)」に関する規定は適用除外されていません。

したがって、管理監督者が22時から翌5時の間に勤務した場合は、深夜割増賃金(0.25倍以上)を別途支払う必要があります。

深夜割増賃金の計算式

管理監督者の給与(月給制)における深夜手当の計算は、以下の手順で行います。

  1. 基礎賃金の算出:
    (月給総額 – 通勤手当・家族手当等の除外賃金) ÷ 月平均所定労働時間 = 1時間あたりの単価
  2. 深夜手当の計算:
    1時間あたりの単価 × 0.25 × 深夜労働時間数

一般社員の残業(時間外+深夜)の場合は「1.5倍(1.25+0.25)」ですが、管理監督者の場合はベースとなる賃金(1.0倍分)は月給に含まれているという解釈になるため、上乗せ分の「0.25倍」のみを支払えば足ります。

計算例:基礎単価3,000円の部長が、深夜に10時間働いた場合

  • 誤:支払いなし
  • 正:3,000円 × 0.25 × 10時間 = 7,500円 を支給

この数千円〜数万円の未払いが、後に数百万の請求に発展する火種となります

管理監督者でも「勤怠管理(労働時間把握)」は義務

「残業代を払わなくて良いから、タイムカードも押さなくて良い」という運用は、現在では違法です。

2019年4月の労働安全衛生法改正により、管理監督者を含む労働者について、労働時間の状況を客観的な方法で把握することが企業に義務付けられました。

これは残業代計算のためではなく、長時間労働による健康障害を防ぐための「健康管理(安全配慮義務)」が目的です。管理監督者の労働時間が把握できていないと、労働基準監督署の是正指導の対象となるだけでなく、万が一過労死やメンタルヘルス不調が発生した場合、企業は「安全配慮義務違反」として多額の損害賠償責任を負うことになります。

遅刻・早退による「賃金控除」はNG

管理監督者に対して、一般社員と同じように「遅刻・早退控除」を行っていませんか?

前述の通り、管理監督者は「勤務時間の自由裁量」を持っていることが要素です。遅刻や早退をした時間分の給与を差し引く(ノーワーク・ノーペイの原則を厳格に適用する)ことは、「時間の裁量権がない=時間管理されている」という証拠となり、自ら管理監督者性を否定することになります。

このような矛盾した運用は、紛争時に会社側の主張を弱める大きな要因となります。」


ペイロールエージェンシー横野

『管理監督者に対して固定残業代を支払っている』ケースも同様に矛盾が生じます。
固定残業代は『時間外労働に対する対価』ですが、本来管理監督者には時間外労働という概念がありません。
固定残業代を支給していること自体が、『会社は実態として時間外労働管理をしている(=管理監督者ではない)』と認めているようなものになります。

もし「名ばかり管理職」と判断されたら?企業のリスク

もし、労働基準監督署の調査や元従業員からの訴えにより、貴社の管理職が「名ばかり管理職(管理監督者に該当しない)」と判断された場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

過去に遡っての残業代請求(消滅時効は3年)

管理監督者性が否定されると、その社員は「一般社員」として扱われます。つまり、過去に遡って、支払っていなかった「時間外割増賃金」と「休日割増賃金」を支払わなければなりません。

未払い賃金の消滅時効は、現在3年(当分の間)に延長されています。

例えば、月給40万円で月50時間の残業をしていた「名ばかり店長」の場合、概算でも以下の規模の請求になります。

  • 月間未払い額:約15万円
  • 3年分(36ヶ月):約540万円

これが複数名いれば、数千万円規模の突発的な支出となり、中小企業の経営を大きく揺るがします。

付加金(ペナルティ)の支払いリスク

さらに、裁判で「悪質」と判断された場合、未払い残業代の元本に加え、それと同額の「付加金」(制裁金)の支払いを命じられるリスクがあります。

つまり、上記の例で言えば、540万円(未払い分)+540万円(付加金)=合計1,080万円の支払い命令が出る可能性があるのです。

また、退職後の請求であれば年利14.6%の遅延損害金も加算されます。コンプライアンス軽視の代償は極めて高額です。


管理監督者の給与計算・運用を適正化するために

このようなリスクを回避し、正しい労務管理を行うために、企業は今すぐ対策を講じる必要があります。

就業規則と実態の乖離をチェックする

まずは、就業規則(賃金規程)の内容と、現場の実態にズレがないかを確認しましょう。

  • 管理監督者の定義は明確か?
  • 管理監督者に対しても深夜割増賃金を支払う規定になっているか?
  • 遅刻・早退控除の規定から管理監督者が除外されているか?
  • 実際の勤務実態(出退勤の自由、権限)は規定通りか?

定期的な棚卸しを行い、実態とかけ離れた「名ばかり管理職」が生まれていないか監視する仕組みが必要です。

まとめ

「管理職だから残業代は不要」「タイムカードは不要」といった運用は、現在の労働法制では重大な経営リスクになり得ます。
未払い賃金の時効が3年となった今、名ばかり管理職の判断ミスが高額な損失に直結するケースも少なくありません。

  • 3要素(権限・裁量・待遇)の実態を伴わせる
  • 管理監督者であっても「深夜割増賃金」は必ず支払う
  • 管理監督者であっても「労働時間」は客観的に把握する

リスクを避けるためには、管理監督者の適正判断に加え、深夜手当や労働時間を正確に管理できる体制が不可欠です。社内対応に限界を感じている場合、給与計算の外部委託も有効な選択肢となります。

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この記事を書いた人

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