国民健康保険と健康保険の違いは?【一覧表】で比較!退職後はどっちが得か、保険料も解説

「会社を辞めた後の健康保険、どうすればいい?」 「扶養から外れるけど、国民健康保険と(会社の保険の)任意継続、どっちがお得?」

働き方やライフステージが変わる時、健康保険の選択で悩む方は多いでしょう。

日本の公的医療保険は、主に会社員が加入する「健康保険」と、自営業者や退職者が加入する「国民健康保険」に分かれますが、どちらを選ぶかで支払う保険料が大きく変わるため、その選択は非常に重要です。

本記事では、この二つの制度の違いを人事労務の専門家である社会保険労務士が解説します。 特に、皆様が最も知りたい「結局、どちらが得なのか?」という疑問に、具体的なケーススタディと最新の保険料シミュレーションを用いて分かりやすくお答えします。

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目次

【早見表】国民健康保険と健康保険(社会保険)の5つの違い

「国民健康保険」と会社員などが加入する「健康保険」。 この2つの制度の最も重要な違いを、一覧表にまとめました。

まずはこの表で、両制度の根本的な違いを把握しましょう。

項目健康保険(主に協会けんぽ)国民健康保険(市区町村国保)
① 加入対象者会社員、公務員とその被扶養者自営業者、フリーランス、退職者、無職の人など
② 保険料の計算方法標準報酬月額(給与)に基づく前年の所得に基づく
③ 保険料の負担会社と本人で折半(労使折半)全額自己負担
④ 扶養の考え方あり(被扶養者の保険料は発生しない)なし(世帯の加入者全員に保険料がかかる)
⑤ 主な給付内容傷病手当金・出産手当金がある原則として、傷病手当金・出産手当金がない

結局どっちが得?ケース別に保険料を徹底比較シミュレーション

ここからは、最も気になる「結局、どちらの保険料が安くなるのか?」という疑問に、具体的なケースで保険料を比較(シミュレーション)してお答えします。

※令和7年度(2025年度)の最新の保険料率を用いて試算します。

ケース1:会社を退職した場合(国民健康保険 vs 健康保険の任意継続)

会社を退職した後の選択肢は、主に「国民健康保険」に新しく加入するか、在職中の「健康保険を任意継続」するかの2択です。

任意継続とは?

退職後も最長2年間、在職中と同じ健康保険に加入し続けられる制度です。 保険料は(これまで会社が負担していた分も含め)全額自己負担になりますが、在職中と同様の給付を受けられるメリットがあります。
※傷病手当金・出産手当金は対象外

どちらがお得になるかは、退職時の給与と前年の所得によって大きく変わります。

【シミュレーションモデル】

  • 年齢: 45歳(介護保険料の負担あり)
  • 居住地: 東京都新宿区
  • 家族構成: 扶養家族2名(専業主婦の配偶者43歳、子15歳)
  • 退職時の給与: 標準報酬月額41万円
  • 前年の給与所得: 500万円(給与所得控除後の所得金額 356万円)

【任意継続の保険料計算】

任意継続の保険料は、「退職時の給与(標準報酬月額)」と「その保険組合の平均給与(※)」を比べ、いずれか低い方の額を基に計算されます。
※協会けんぽの場合、前年度9月30日時点の全被保険者の平均標準報酬月額)

令和7年度(2025年度)の協会けんぽ(東京支部)の場合、この計算の基になる給与(標準報酬月額)の上限は 32万円 です。

モデルケースの退職時給与は41万円ですが、上限の32万円を超えるため、32万円を基に計算されます。適用される保険料率は、介護保険料(1.59%)を含めて 11.5% です。

  • 月額保険料: 320,000円 × 11.5% = 36,800円
  • 年間保険料: 36,800円 × 12ヶ月 = 441,600円

【国民健康保険の保険料計算】

国民健康保険料は、前年の所得を基に市区町村が定める「所得割」(所得に応じてかかる保険料)と「均等割」(加入者数に応じてかかる保険料)の合計で計算されます。

ここでは東京都新宿区の令和7年度の料率を適用します。

① 所得割額 (所得に応じてかかる保険料) (計算基礎額: 356万円 – 43万円 = 313万円)

  • 医療分: 313万円 × 7.71% = 241,323円
  • 支援金分: 313万円 × 2.69% = 84,207円
  • 介護分(本人分): 313万円 × 2.25% = 70,425円

② 均等割額 (加入者数に応じてかかる保険料)

  • 医療分: 47,300円 × 3人 = 141,900円
  • 支援金分: 16,800円 × 3人 = 50,400円
  • 介護分(本人・配偶者分): 16,600円 × 2人 = 33,200円

▶︎ 年間保険料(①+②の合計)

(所得割合計)241,323 + 84,207 + 70,425 +(均等割合計)141,900 + 50,400 + 33,200 = 621,455円

項目健康保険(任意継続)国民健康保険
算定基礎標準報酬月額 320,000円(上限適用)前年の所得 3,560,000円
適用料率11.5%(健康保険料率9.91% + 介護保険料率1.59%)新宿区の料率(所得割+均等割)
年間保険料(目安)441,600円約621,455円
ポイント扶養家族の保険料は0円家族2人分の均等割が加算される

【シミュレーション結果】

このケースでは、任意継続の方が年間約18万円もお得になりました。

2年間のトータルコストで判断しよう

ただし、1年目の保険料だけで判断するのは早計です。保険料の計算ルールが異なるため、2年目以降の状況が変わります。

  • 国民健康保険: 保険料は「前年の所得」で決まります。退職して収入がなくなった(または減った)場合、2年目の保険料は大幅に安くなる可能性があります。
  • 任意継続: 保険料は原則として2年間変わりません。

賢い選択戦略(1年目と2年目で切り替える)

以前は、任意継続は一度加入すると途中でやめられませんでした。 しかし、2022年の法改正により、任意継続を途中でやめて国民健康保険に切り替えることが可能になりました 。

このため、以下のような戦略的な選択が可能です。

  • 1年目: (前年の所得が高く国保料が高額になるため)任意継続を選択する。
  • 2年目: (前年の所得が下がり国保料が安くなるため)国民健康保険に切り替える

ご自身の所得状況を考慮し、2年間のトータルコストで判断することが賢明です。

ケース2:パート・アルバイトで扶養から外れる場合

パートやアルバイトで働く方が収入を調整する際に意識するのが「年収の壁」です。特に社会保険に関しては「106万円の壁」と「130万円の壁」が重要になります。

1. 106万円の壁 (=勤務先の社会保険に加入する壁)

  • 概要: 勤務先の会社の健康保険・厚生年金に加入する義務が発生するラインです。
  • 主な条件: 従業員数51人以上※の企業で、①週の労働時間が20時間以上、②月収8.8万円以上などの条件をすべて満たす場合。
  • 注意点: この月収8.8万円(年収約106万円)には、残業代や賞与、通勤手当は含まれません。
  • ※注:従業員数は段階的に引き下げられており、2024年10月からは51人以上となっています。

2. 130万円の壁 (=家族の扶養から外れる壁)

  • 概要: 会社の規模に関わらず、配偶者など家族の健康保険の扶養から外れるラインです。
  • 主な条件: 年収が130万円以上になる場合。
  • 注意点: この年収130万円には、交通費や残業代も含まれます。
  • 結果: 扶養から外れた後は、ご自身で「国民健康保険」に加入するか、上記の「106万円の壁」の条件を満たして「会社の健康保険」に加入する必要があります。

「働き損」と社会保険加入のメリット

社会保険に加入すると保険料が天引きされるため、一時的に手取り額が減る「働き損」の状態になることがあります。

しかし、政府も人手不足対策として「年収の壁・支援強化パッケージ」を進めており、将来的には社会保険への加入を促す方向性が示されています。

会社の健康保険に加入することは、短期的な手取り減というデメリット以上に、将来の安心につながる大きなメリットがあります。

会社の健康保険に加入する3つのメリット

  1. 保険料の半分を会社が負担してくれる (国民健康保険は全額自己負担です)
  2. 扶養家族がいる場合は健康保険料が被保険者負担で足りる(扶養加入者の保険料はかからない)
  3. 病気やケガで働けない時の「傷病手当金」など、保障が手厚い (国民健康保険には原則ありません)

目先の手取り額だけでなく、長期的な視点で自身のキャリアとライフプランに合った働き方を選択することが重要です。

ケース3:独身・フリーランスの場合

フリーランスや個人事業主の方は、原則として「国民健康保険」に加入します。

国民健康保険料は「前年の所得」(経費等を引いた後)を基に計算されます。そのため、ご自身の所得に応じた保険料の目安を把握しておくことは、事業計画を立てるうえで非常に重要です。

ここでは、東京都新宿区在住・40歳未満・単身のフリーランスをモデルに、年間所得別の保険料目安を紹介します。

年間所得(経費等控除後)年間保険料(目安)月額保険料(目安)
200万円約227,400円約18,950円
300万円約331,400円約27,617円
400万円約435,400円約36,283円
500万円約539,400円約44,950円

【試算の前提】 ※上記は令和7年度の東京都新宿区の料率に基づき、青色申告特別控除などを考慮しない総所得金額等で試算したものです。 ※実際にはお住まいの市区町村の料率や、個人の所得控除などにより変動します。

5つの違いをわかりやすく解説

それぞれの項目を、初心者の方にも分かりやすく具体的に解説します。

違い① 加入対象者:会社員か、それ以外か

  • 健康保険(会社員など): 会社員や公務員、一定の条件を満たすパート・アルバイトの方が加入します。 (運営元は「協会けんぽ」や企業の「健康保険組合」など)
  • 国民健康保険(自営業・退職者など): 自営業者、フリーランス、退職した方、無職の方など、他の健康保険に加入していない全ての人が加入します。 (運営元はお住まいの市区町村)

違い② 保険料の計算方法:給料ベースか、所得ベースか

  • 健康保険: 毎月の給与や賞与(標準報酬月額)を基に計算されます。基本的に給与が高いほど保険料も高くなりますが、上限額が設けられています。
  • 国民健康保険前年1年間(1月~12月)の所得(事業所得、給与所得など)を基に計算されます。所得が多ければ保険料は高くなります。計算方法は自治体ごとに異なります。

違い③ 保険料の負担

  • 健康保険保険料の半分を会社が負担してくれます(=労使折半)。給与明細から引かれている保険料は、ご自身が負担する半額分のみです。
  • 国民健康保険: 会社のような負担者(雇用主)がいないため、全額自己負担となります。

違い④ 扶養の考え方

  • 健康保険: 年収130万円未満など、条件を満たす家族を「被扶養者」として保険に入れることができます。 扶養家族が何人増えても、本人の保険料は変わりません。 これは家計にとって非常に大きなメリットです。
  • 国民健康保険: 「扶養」という考え方がありません。 世帯単位での加入となり、収入のない子どもや配偶者も含め、加入者一人ひとりに対して「均等割(※)」という保険料がかかります。そのため、家族の人数が多いと負担が重くなる傾向があります。 (※所得に関わらず、加入者数に応じてかかる保険料)

違い⑤ 手厚い保障(傷病手当金など)

万が一の際の保障内容(給付)にも大きな違いがあります。

  • 健康保険: 業務外の病気やケガで連続4日以上仕事を休み、給与が出ない場合に、給与のおおよそ3分の2が支給される「傷病手当金」があります。 また、「出産手当金」もあり、雇用されている人を支える手厚い保障が特徴です。
  • 国民健康保険: 原則として、「傷病手当金」や「出産手当金」の制度はありません。 (※一部の市区町村や国民健康保険組合では独自の制度を設けている場合があります。)

この給付の差は、単なる保険料の比較では見えない「隠れた価値」と言えます。例えばフリーランスの方が病気で2ヶ月間働けなくなった場合、収入はゼロになります。しかし、同じ状況の会社員は傷病手当金によって収入の約3分の2が保障されます。

このように、国民健康保険の「真のコスト」は、月々の保険料だけでなく、万が一の収入減少リスクに備えるための民間の保険料なども含めて考える必要があります。

この視点を持つと、保険料の半分を会社が負担してくれることに加え、こうした手厚い保障がある「健康保険」のメリットがより明確になります。

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保険の切り替え手続きガイド【状況別】

保険の種類が決まったら、次に行うのが「切り替え手続き」です。 手続きには期限があり、遅れると不利益が生じる場合もあるため、流れをしっかり確認しておきましょう。

ケース1:就職して「健康保険」に加入する場合

会社がやること:加入手続き

入社時に会社から求められる書類(マイナンバー、年金手帳など)を提出すれば、健康保険の加入手続きは会社が行ってくれます。

資格の確認方法

従来の健康保険証は廃止され、原則として「マイナ保険証」(マイナンバーカードを保険証として利用登録したもの)で資格を確認します。 マイナ保険証を利用しない方や、交付を希望する方には、会社を通じて「健康保険資格確認書」が交付されます。

自分でやること:国民健康保険の「脱退」手続き(重要!)

会社の健康保険に加入したら(例:「健康保険資格確認書」が手元に届いたら)、ご自身でお住まいの市区町村の役所窓口へ行き、国民健康保険の脱退手続きを行う必要があります。 この手続きは自動的には行われません 。

【国保の脱退手続きに必要なもの】

  • 新しく加入した健康保険の「健康保険資格確認書」または、マイナ保険証の提示
    ※自治体によって対応が異なる場合があるため、資格確認書を持参するのが確実です
  • これまで使っていた国民健康保険の保険証(または国民健康保険の資格確認書)
  • 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)

脱退手続きを忘れると、国民健康保険の資格が残ったままになり、保険料が二重に請求されてしまう可能性があるため、必ず速やかに行いましょう。

ケース2:退職して「国民健康保険」に加入する場合

手続きの期限と場所

  • 期限: 退職日の翌日(健康保険の資格喪失日)から原則14日以内 
  • 場所: 住民票のある市区町村の役所窓口

【国保の加入手続きに必要なものリスト】

  • 健康保険資格喪失証明書(退職した会社から発行してもらいます)
  • 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
  • 印鑑(自治体による)

「健康保険資格喪失証明書」について 実務上、手続きにはこの「健康保険資格喪失証明書」の提出を求められることがほとんどです。(自治体によっては離職票や退職証明書などで代用できる場合もありますが、事前に役所にご確認ください)

この書類は退職後すぐに発行されない場合もあるため、事前に会社の発行スケジュールを確認しておくとスムーズです。

手続きの注意点(期限を過ぎた場合)

手続きが14日を過ぎても加入は可能ですが、以下のデメリットがあります。

  • 保険料は、退職日の翌日まで遡って請求されます。
  • 手続きが完了するまでの間に発生した医療費は、一時的に全額自己負担となるリスクがあります 。

国民健康保険と健康保険のよくある質問

Q. 保険料を二重払いしてしまったら、返金されますか?

A: はい、返金(還付)されます。

国民健康保険の脱退手続きの遅れなどで保険料を二重に支払ってしまった場合、後日、市区町村から「過誤納金還付通知書」といった案内が届きます 。

その書類に記載された手順に従って手続きをすれば、指定した口座に納めすぎた保険料が返金されます。ただし、国民健康保険料に未納がある場合は、返金分がそちらに充当されるのが一般的です 36。手続きから実際の返金までは1〜2ヶ月程度かかることが多いです。

Q. 保険証のデザインや使える病院に違いはありますか?

A: 保険証のカードデザインや発行元(協会けんぽ、〇〇健康保険組合、〇〇市など)は異なりますが、受けられる医療サービスに違いはありません。

どちらの保険証でも、日本全国の保険医療機関で同じ診療を、同じ自己負担割合(未就学児や高齢者などを除き、原則3割)で受けることができます。使える病院や治療内容に差はありませんので、ご安心ください。

自分のライフプランに合った健康保険を選ぼう

この記事では、国民健康保険と健康保険の違いについて、制度の仕組みから具体的な保険料シミュレーション、手続きの方法まで詳しく解説しました。

このような複雑な社会保険料の計算や手続きは、給与計算のプロフェッショナルにお任せいただくことで、事業主様も従業員様も安心して本業に専念できます。給与計算や社会保険手続きに関するお悩みは、ぜひ株式会社Aimペイロールエージェンシーにご相談ください。

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この記事を書いた人

Aimペイロールエージェンシーでは給与計算のアウトソーシング・コンサルティングを通じて企業の経理・総務ご担当者様をサポートしています。当コラムでは、給与計算の専門家として、疑問・お悩み改善に役立つ正確な情報の発信に努めています。

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