「毎月の勤怠集計に追われ、本来の業務に集中できない」 「頻繁な法改正により、現在の勤怠管理方法がコンプライアンス違反になっていないか不安だ」
勤怠管理は、単に従業員の出退勤時間を記録するだけの事務作業ではありません。一歩間違えれば「未払い残業代請求」や「過労死ライン超えによる書類送検」といった、企業経営を揺るがす重大なリスクに直結する業務です。
特に近年は、働き方改革関連法による「残業時間の上限規制」や「有給休暇取得義務化」など、企業が守るべきルールは複雑化の一途をたどっています
本記事では、人事労務の専門家が、勤怠管理の法的義務や実務のポイントを解説するとともに、「リスクをゼロにするための効率化手法(アウトソーシングの活用)」までを分かりやすく解説します。
- 勤怠管理で管理すべき項目
- 各勤怠管理方法の比較
- 勤怠管理のリスクを減らす方法
勤怠管理とは?基本と目的を再確認
勤怠管理の定義と法的義務(労働基準法)
勤怠管理とは、法的には「使用者が労働時間を適正に把握し、記録する義務」を履行することを指します。これは企業の規模にかかわらず、労働基準法および労働安全衛生法によって課せられた使用者の責務です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、原則として以下のいずれかの方法で労働時間を把握することが求められています。
参考:労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
- 使用者自らの現認(管理者が直接確認して記録すること)
- 客観的な記録(タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など)
「自己申告制」も条件付きで認められていますが、実態との乖離がないか調査する必要があるなど運用は厳格です。「うちは従業員に任せているから」という放置は、客観的な記録義務違反となり、是正勧告の対象となります。
なぜ重要なのか?(給与計算・コンプライアンス)
勤怠管理が重要視される理由は、主に以下の3点に集約されます。
①正しい給与支払い(賃金全額払いの原則)】


労働基準法第24条により、賃金は全額支払わなければなりません。1分単位の労働時間を正確に把握していなければ、正しい残業代(割増賃金)を計算できず、結果として「賃金未払い」という違法状態になります。
②過重労働の防止(安全配慮義務)
長時間労働は脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調の原因となります。企業には労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」があり、従業員の健康を守るために労働時間を管理する必要があります。
③労働安全衛生法の遵守
2019年の法改正により、管理監督者(管理職)を含むすべての労働者の労働時間把握が義務化されました。
人事労務担当者が管理すべき6つの基本項目
では、具体的に「何」を確認・記録すればよいのでしょうか。実務上、必ず管理すべき6つの基本項目を解説します。
始業・終業時刻と労働時間
「9:00〜18:00」といった予定時刻(シフト)ではなく、実際の「打刻時刻」を記録します。ここで重要なのは、「会社にいた時間」と「労働時間」の区別です。使用者の指揮命令下に置かれている時間はすべて労働時間となります。着替え時間や待機時間も、義務付けられている場合は労働時間に含まれる点に注意が必要です。
時間外労働(残業)・深夜労働・休日労働
給与計算において最もミスが起きやすく、リスクが高い項目です。
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた分は「時間外労働」、22時以降は「深夜労働」、法定休日の労働は「休日労働」として区別し、それぞれの割増率(25%増、35%増など)で賃金を計算する必要があります。
【解説:36協定の「45時間」と「100時間」の違い】
残業をさせるために必須となる36協定(時間外・休日労働に関する協定届)ですが、その上限規制には大きな「落とし穴」があります。
| 項目 | 一般条項(原則) | 特別条項(臨時的な特別な事情) |
|---|---|---|
| 上限時間 | 月45時間、年360時間 | 年720時間、単月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内 |
| カウント対象 | 「時間外労働」のみ | 「時間外労働」+「休日労働」(月100時間未満・平均80時間規制の場合) |
- 一般条項(月45時間・年360時間):ここには「法定休日労働」の時間を含みません。純粋な残業時間(法定時間外労働)だけでカウントします。
- 特別条項(月100時間未満・平均80時間以内):ここには「法定休日労働」の時間を含めてカウントします
「残業は月40時間だから、上限の45時間以内だ」と安心していても、もしその月に休日出勤を60時間していた場合、合計100時間に達してしまい、特別条項の上限(100時間未満)に抵触し、労働基準法違反(罰則対象)となります。
休憩時間
労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、「労働時間の途中に」与える義務があります。休憩中に電話番をさせている場合などは労働時間とみなされるため、完全に業務から離れさせる必要があります。
有給休暇の取得状況(年5日の義務化)
2019年より、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の取得が義務化されました。基準日から1年以内に5日取得できていない場合、労働者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。取得日数の管理も、現代の勤怠管理の必須項目です。
勤怠管理の方法とメリット・デメリット比較
勤怠管理の手法は主に3つあります。それぞれの特徴を比較します。
| 比較項目 | 紙の出勤簿・タイムカード | エクセル・スプレッドシート | 勤怠管理システム |
|---|---|---|---|
| 集計の効率 | 低(手計算) | 中(関数で計算) | 高い(自動集計) |
| 入力の正確性 | 低(記入漏れ) | 中(入力ミス) | 高い(防止機能) |
| リアルタイム性 | なし(月末まで不明) | 低(更新頻度に依存) | あり(即座に把握) |
| 法改正対応 | 困難(キャッチアップが必要) | 困難(キャッチアップが必要) | 容易(自動アップデート) |
| コスト | 低 | 低 | 中~高(月額費用) |
| 上限規制の管理 | 非常に困難 | 手間がかかる | 自動アラートで通知 |
紙の出勤簿・タイムカード
従来からある手法で、導入コストが安く、誰でも直感的に使える点がメリットです。 しかし、毎月の集計を手作業で行うため膨大な時間がかかり、集計ミスが発生しやすいデメリットがあります。また、「代理打刻」などの不正リスクや、5年間の保存義務に伴う保管場所の問題も深刻です。
Excel(エクセル)管理
PCで自己申告したり、タイムカードの値を転記して管理する方法です。コストがかからず、自社の計算ルールに合わせて柔軟に数式を組めるメリットがあります。 一方で、数式エラーによる計算ミスや、マクロを組んだ担当者しか触れない「属人化」のリスクが高い手法です。法改正のたびに計算式をメンテナンスする手間も大きく、対応漏れが給与計算ミスに直結します。
勤怠管理システム(クラウド等)
PCやスマホ、ICカードで打刻し、データがクラウド上にリアルタイムで集計される仕組みです。 メリットは、集計作業が自動化され、法改正にも自動アップデートで対応できる点です。給与ソフトとの連携も容易で、ミスを大幅に減らせます。デメリットとしては、初期設定の手間やランニングコストが発生する点、運用ルールが定着しないと形骸化するリスクがある点が挙げられます。



実務上、勤怠管理システムをしっかり運用できている会社は、給与システムにボタン一つで勤怠情報を取り込める上、複雑な時間外労働や割増賃金まで自動計算されます。正確性と効率性を考えると、個人的にはすべての会社において勤怠システムの導入を強く推奨します。
「勤怠管理は誰の仕事?」業務フローとよくある課題
勤怠締めから給与計算までの業務フロー
勤怠管理は「打刻して終わり」ではありません。給与が支払われるまでには、以下のような長い業務フローが存在します。
現場で起きがちなトラブル(打刻漏れ・申請遅れ)
システムを導入しても解決しづらいのが、「入力するのは人である」という点に起因するトラブルです。
「打刻を忘れる」「残業申請を出さない」「承認者が承認を忘れる」といったヒューマンエラーは必ず発生します。 結局、総務・労務担当者が一人ひとりに督促メールを送り、修正作業に追われることになり、「システムを入れたのに楽にならない」という声も少なくありません。
自己管理には限界がある?法改正対応の難易度
さらに、担当者を悩ませるのが頻繁な法改正です。
残業時間の上限規制、有給休暇の管理、社会保険の適用拡大など、制度は年々複雑化しています。これら全てを中小企業の社内リソースだけで、本業の片手間に追従するのは、リスク管理の観点からも限界がきていると言えます。
勤怠管理を効率化し、リスクをゼロにする方法
システム導入の成功には「運用ルール」が不可欠
システムはあくまで「道具」です。
導入を成功させるには、自社の就業規則とシステムの計算設定(丸め処理や休暇の定義など)を合致させ、明確な「運用ルール」を設計することが不可欠です。 「いつまでに申請するか」「修正フローはどうするか」といったルールを定め、従業員に周知徹底して初めて、システムは真価を発揮します。
給与計算アウトソーシングの選択肢
「システムの導入や運用ルールの設計に不安がある」「毎月の集計と給与計算のプレッシャーから解放されたい」 そう考える企業にとって、最も有効な解決策が「給与計算アウトソーシング」です。
勤怠の集計から給与計算、明細の発行までをプロに任せることで、以下のメリットが得られます。
- コア業務への集中:毎月のルーチンワークがなくなり、採用や育成など利益を生む業務に時間を使える。
- 属人化の解消:担当者の退職や休職による業務停止リスクがなくなる。
- 法対応とミスの防止:専門家が法改正に対応し、正確な計算を行うため、労務リスクを極小化できる。
まとめ
勤怠管理は企業の義務ですが、法改正が続く中で、社内だけで正確に運用し続けるのは大きな負担です。
どれだけシステムを入れても、設定や最終チェックは人が行う以上、ミスのリスクは残ります。
「リスクを減らしたい」「本業に集中したい」と感じたら、勤怠集計から給与計算までのアウトソーシングも一つの選択肢です。
株式会社Aimペイロールエージェンシーでは、就業規則に沿った勤怠設定、毎月のチェック、法改正対応まで一括で対応しています。
現在の勤怠運用に問題がないか、まずはお気軽にご相談ください。












で何が変わる?罰則・企業の対応を徹底解説-300x158.png)